2025年4月、Zenken社内で開催された生成AI活用ウェビナーは「ChatGPTをどう実務に溶け込ませるか」に一点集中した内容だった。メインスピーカーに指名されたのが沖縄オフィスのK氏。K氏は3月の1か月間で約2,000回、1日平均100回超、約450名の利用者中でも5位に入るヘビーユーザーだ。本ウェビナーでは、その膨大な試行錯誤から抽出した「業務に直結する4つの事例」が初めて社内全体に共有された。
事例1 マーケティングフレームを“論理式”に翻訳する
同社が提案で用いる3C分析やバリュープロポジションを、K氏は数理論理の記号で再定義した。

構造を明示し、さらに強みの再解釈やカスタマージャーニーも同様に変数化してJSONに落とし込む。この“公理系”をChatGPTに渡すと、モデルは記号関係を厳密に守りながら
- 強みとニーズが重なる具体市場
- 競合が取りこぼしている隙間セグメント
- 投資優先度の低い領域
を数分で抽出する。従来ホワイトボードで数時間かけていた仮説立案が1/5以下に短縮されたという。
事例2 “記号なし”との比較検証
同じ油圧シリンダーメーカーの情報を、記号を省いた自然文だけで指示すると、ChatGPTは「技術革新への対応」「差別化の必要性」など抽象論にとどまった。再び論理式を前提に与えると、出力は即座に
- 強みを再パッケージする具体策
- 価格競争に巻き込まれるリスクセクター
- 市場投入順序と推奨予算配分
まで踏み込み、具体度が一気に向上。毎回の説明コストが実質ゼロになったとK氏は語った。
事例3 Whyを5回繰り返す記事構成生成
SEO向けページ設計では“なぜ分析”をChatGPTに委任。手順は①主要キーワードからトピッククラスターを抽出、②その話題が生じる理由を「なぜ」で2段階推論、③潜在インサイトまで「なぜ」を3回追加、④各見出しをその順序で配置する妥当性を説明――というもの。H3/H4見出し、FAQ候補、配置ロジックが表形式で提示され、ライターは肉付けに専念できる。
事例4 Gemini Deep Researchとのハイブリッド運用
大量の外部情報収集にはGoogle GeminiのDeep Researchを併用。競合10社の選定理由と除外理由をレポート化し、クリック一つでGoogleドキュメントに出力。これを論理式プロンプトと接続することで、「ファクト+推論」を同一ワークフロー内で完結させた。回数制限がChatGPTよりも緩いため、100件超の情報もストレスなく処理できる。
業務インパクト
K氏は「思考の前半50%をコピー&ペーストで自動化できた」と総括。メール施策、提案書、コンテンツ設計のどれでも
- Google検索に費やす時間が激減
- 仮説検証サイクルが日単位から時間単位へ加速
- “AIに置き換えられる”不安より“質と量を両立できる”期待が増大
という効果を実感している。
ChatGPTと“相棒”になるための心構え
ウェビナーの締めくくりでK氏は、ChatGPTを使いこなす鍵は「圧倒的な試行回数」だと強調した。論理式やプログラミング的手法はあくまで副産物であり、各自が自分の業務領域で「誰よりも多く対話した」という事実こそが最適なプロンプトとワークフローを生む。2000回超の実験を積み重ねた彼だけが持つ説得力あるメッセージだった。