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AIエージェント勢力図2026 3強徹底比較


目次 35項目

2026年2月、あるAI企業の新機能発表をきっかけに、世界中の業務ソフトウェア企業の株価が急落しました。初日だけで約2,850億ドル(約43兆円)、その後の連鎖的な売りを含めると損失額は1兆ドル近くに達したとも報じられています。法律・税務の情報大手Thomson Reutersは1日で過去最大の下落(約17%)を記録。会計ソフトのIntuit、顧客管理のSalesforce、プロジェクト管理のAtlassianなど、名だたるSaaS企業が軒並み打撃を受けました。

なぜ、AIの発表で「業務ソフトの会社」がこれほどの影響を受けたのか。その答えが、この記事のテーマであるAIエージェントです。

そもそも「AIエージェント」って何?

「答えるAI」から「働くAI」へ

いままでのAI(ChatGPTなど)は、質問すれば答えてくれる「相談相手」でした。「この文章を要約して」と頼めば要約してくれる。「メールの下書きを考えて」と言えば文案を出してくれる。便利ですが、あくまで「聞かれたことに答えるだけ」です。

AIエージェントは違います。ゴールを伝えれば、自分で考えて、必要な作業を最後までやり切ってくれる存在です。

たとえば、営業担当のあなたが「来週訪問するA社の準備をして」と頼んだとします。

  • いままでのAI: 「A社について教えて」と聞けば概要を教えてくれる。でも、それだけ。次に「過去の取引履歴をまとめて」「業界の最新ニュースを調べて」「訪問資料を作って」と、1つずつ指示を出す必要がある
  • AIエージェント: 「A社訪問の準備をして」の一言で、企業サイトの調査 → 過去のメールから取引履歴を確認 → 業界ニュースのチェック → 訪問前資料の作成まで、自分で段取りを組んで一気に仕上げてくれる
いままでのAIAIエージェント
使い方「この文章を要約して」と1回ずつ頼む「来週の出張を手配して」とまとめて頼む
例えると辞書を引く気の利く同僚にお願いする
人の関わり毎回こちらが指示を出す最初に頼んだら途中は任せられる
外部との連携なしメール送信、予約、ファイル操作など

「エージェント」を名乗るニセモノに注意

「AIエージェント」がバズワード(流行語)になった結果、実態が伴わないのに「エージェント」を名乗る製品が急増しています。導入を検討する際には、見分け方を知っておくことが大切です。

本物のエージェントニセエージェント(ワークフロー自動化)
頼み方「来週の出張を手配して」とゴールだけ伝える「まず新幹線を検索→次にホテルを検索→…」と手順を人間が1つずつ設定する
AIの役割自分で考えて、次に何をすべきか判断する人間が決めた手順を、決められた通りに実行するだけ
想定外への対応「満室だったので別のホテルを探しました」と自分で対処手順にないことが起きると止まる
例えると「任せたよ」で動ける部下「マニュアル通りにやって」の作業

後者は従来から存在する「ワークフロー自動化」(RPAやノーコードツールなど)と本質的に同じです。それ自体は便利な仕組みですが、「AIエージェント」とは別物です。名前だけ変えて売られている製品には気をつけましょう。

この記事では、「ゴールを伝えれば、AIが自律的に判断しながら仕事を完了するもの」をエージェントと定義して、Claude・Gemini・ChatGPTの3サービスを比較していきます。

なぜ今「エージェント」が話題なのか

AIエージェントが実用レベルになった背景には、3つの技術的な変化があります。

  1. AIが「パソコンを操作」できるようになった ― ブラウザでの検索、フォームへの入力、ファイルの作成など、いままで人間がマウスやキーボードでやっていた操作をAI自身ができるようになりました
  2. AIが「段取りを組む」のが上手くなった ― 「まずこれを調べて、次にここを確認して、最後にまとめる」という複数ステップの作業を、AI自身が計画・実行できるようになりました
  3. AIと「業務ツールがつながる」仕組みが整った ― メール、カレンダー、ファイル管理、顧客管理など、さまざまな業務ツールとAIを接続する共通の仕組み(業界標準規格)が登場。AIが孤立した存在ではなく、業務の中に溶け込めるようになりました

この3つが揃ったことで、2026年は「AIが答える時代」から「AIが働く時代」に変わる転換点になりつつあります。では、この流れを牽引する3つのサービスを順番に見ていきましょう。

Claude ― 専門職の業務を丸ごと任せるAI

開発元のAnthropic(アンソロピック)は、OpenAIの元メンバーが「AIの安全性」を重視して2021年に設立した企業です。2026年2月時点の企業評価額は約3,800億ドル(約58兆円)。冒頭の株価暴落を引き起こしたのが、まさにこのClaudeの新機能でした。

Cowork(コワーク)― 事務仕事のためのAIエージェント

2026年1月に発表されたCoworkは、デスクトップで動く業務用エージェントです。パソコン上のファイルを読み書きしながら、複数ステップの仕事を自動的に処理してくれます。

特に注目すべきは11種類の業務プラグインです。

  • 法務: 契約書のレビュー、リスク箇所の指摘、NDA(秘密保持契約)のチェック、コンプライアンス確認
  • 営業: CRM(顧客管理ツール)と連携した見込み客のリサーチ、フォローアップメールの作成
  • 経理: データ分析、定型レポートの作成、数値予測
  • マーケティング、カスタマーサポート、プロダクト管理など、合計11分野

この発表が「既存の業務ソフトを丸ごと置き換えるのでは」と受け止められ、冒頭で紹介したSaaS企業の株価暴落を引き起こしました。法務プラグインの発表だけで、Thomson Reutersの株価が過去最大の下落を記録したことからも、市場のインパクトの大きさがうかがえます。

Claude in Chrome ― ブラウザ上の作業を自動化

Chrome(ブラウザ)の拡張機能として動作し、Webサイト上での入力作業、複数サイトの横断調査、情報収集と整理を自動で行います。2025年8月にパイロット版がスタートし、現在は全有料プランでベータ版として利用可能です。Coworkと連携させることで、デスクトップの作業とブラウザの作業を一体的に処理できます。

企業向け料金プラン

法人向けにはTeam(管理コンソール、SSO対応)とEnterprise(監査ログ、SCIM、きめ細かいアクセス制御など)の2プランがあります。Enterpriseは要問い合わせのカスタム価格です。

詳細はClaude公式料金ページをご確認ください。

日本での状況

日本語に対応済みで、実務利用が可能です。大手コンサルティング企業Accentureが約3万人規模でClaudeの業務導入を推進しており、グローバルでの企業向け市場ではシェアNo.1(約40%)を獲得しています。

こんな組織に向いている

  • 法務・営業・経理など専門部署の業務効率化を重視する企業
  • 契約書チェック、リサーチ、レポート作成など定型的だが判断が必要な業務が多い職場
  • AI の安全性・信頼性を重視する組織

Gemini ― Googleツールと一体化した身近なエージェント

Google DeepMindが開発するGeminiは、Gmail、Googleドライブ、カレンダーなど、多くの企業がすでに使っているGoogle Workspaceとの連携が最大の強みです。月間利用者は7.5億人にのぼり、1年前の約1.7倍に急成長しています。

エージェントモード ― Geminiアプリの自律的な作業機能

Geminiアプリ内の「エージェントモード」は、複雑な依頼を小さなステップに自動分解し、Gmail・カレンダー・Web検索を組み合わせて実行してくれます。

たとえば「来週の営業会議に向けて、先月の売上データをドライブから探して、前年比の変化をまとめて、参加者にメールで共有して」といった指示に対応できます。メール送信など重要な操作の前には必ず人間の確認を求める設計になっており、「勝手に送られてしまった」という心配はありません。

ただし、このエージェントモードは現時点ではAI Ultraプラン(月額約38,000円)限定かつ米国・英語のみの提供です。日本のユーザーが利用できるようになる時期は未定で、この点はProject Marinerと同様のハードルがあります。

Project Mariner ― ブラウザを自動操作する代行エージェント

Chromeブラウザ上で、予約・買い物・データ入力といったWeb上の作業を自動で代行するエージェントです。Google I/O 2025(2025年5月)で発表され、複数タスクの並列処理にも対応しています。ただし、利用にはAI Ultraプラン(月額約38,000円)が必要で、現時点では限られたユーザー向けです。

Workspace Studio ― 便利だが「エージェント」ではない

Googleは2025年12月に発表したWorkspace Studioを「AIエージェント」として打ち出しています。しかし、実際に使ってみた印象は「ワークフロー自動化ツール」に近いものです。

AIが自律的にゴールに向かって動くのではなく、作業ステップをノーコード(プログラミング不要)の画面で1つずつ設定していく方式です。「Gmailからこの条件でメールを検索 → 結果をスプレッドシートに書き出し → Google Chatに通知」という手順を人間が組み立てる必要があります。

Googleは「Geminiの推論能力がワークフローの作成を支援する」と説明しており、AIが補助する場面もあります。しかし、この記事で定義する「ゴールを渡して自律的に仕事を完了する」エージェントとは異なるアプローチです。Gmail・ドライブとの連携が深い分、Google Workspace利用企業にとっては便利な自動化ツールではありますが、「AIエージェント」という言葉のイメージとのギャップには注意が必要です。

企業向け料金プラン(Google Workspace)

2025年よりGemini AI機能がGoogle Workspaceの全ビジネスプランに標準搭載され、追加料金なしで利用可能になりました。Business StandardBusiness PlusEnterpriseの各プランがあり、Enterpriseは要問い合わせのカスタム価格です。

ただし、エージェントモードやProject Marinerなどの先進的なAIエージェント機能は、現時点ではコンシューマー向け上位プラン限定で、Google Workspaceへの統合時期は未定です。

詳細はGoogle Workspace公式料金ページをご確認ください。

日本での状況

Androidスマートフォンに標準搭載されており、アプリをインストールしなくてもOS経由で利用できるため、日本国内でも幅広いユーザーに浸透しています。Google Workspaceの国内法人利用も拡大中です。

こんな組織に向いている

  • 社内でGoogle Workspace(Gmail、ドライブ、カレンダー)を使っている企業
  • 新しいツールを増やさず、既存の仕事の延長線上でAIを活用したい組織
  • ただし、本格的なエージェント機能のWorkspace統合は今後の展開に注目

ChatGPT ― 圧倒的な知名度と導入のしやすさ

OpenAIが開発するChatGPTは、週間利用者9億人超、100万社以上の企業が導入する世界最大のAIサービスです。「AI=ChatGPT」というほどの知名度があり、社員への浸透のしやすさでは群を抜いています。

ChatGPTエージェント ― ブラウザ操作と調査を統合

2025年7月に発表されたChatGPTエージェントは、ブラウザの自動操作、調査、資料作成を1つにまとめた統合型のエージェント機能です。

たとえば「競合3社の最新プレスリリースを調べて、それぞれの強み・弱みを比較表にまとめて」と頼めば、Webサイトを自動で巡回し、情報を収集・分析して、表形式でアウトプットしてくれます。

もともとは「Operator」という単体サービスとして2025年1月に提供が始まりましたが、わずか半年で統合され、現在はChatGPTの標準機能として利用できます。

Deep Research(ディープリサーチ)― 調査担当者レベルのレポートを自動生成

数百のWebサイトを5〜30分かけて自動的に調査し、出典つきの包括的なレポートを生成する機能です。2025年2月にリリースされ、現在は全有料プランで利用可能(回数制限あり)。無料プランでも簡易版を月5回まで試せます。

市場調査、競合分析、業界動向のリサーチなど、これまで担当者が数時間〜数日かけていた作業を大幅に短縮できます。出典が明記されるため、上司や取引先への報告にもそのまま活用しやすいのが特長です。

Frontier(フロンティア)― 企業向けエージェント管理基盤

2026年2月に発表された法人向けプラットフォームです。社内の顧客管理ツール(CRM)やデータベースとAIを接続し、自社専用のエージェントを構築・管理できます。Uber、State Farm、Intuitなどの大企業が初期導入企業として名を連ねています。

企業向け料金プラン

法人向けにはBusiness(SSO/SAML対応、管理コンソール、Slack・Google Drive・SharePoint連携)とEnterprise(無制限の利用枠、SCIM、24時間サポート、データ所在地の指定など)の2プランがあります。いずれも業務データでのAI学習はデフォルトで無効です。

詳細はChatGPT公式料金ページをご確認ください。

日本での展開

ソフトバンクとの合弁会社「SB OAI Japan」を2025年11月に設立。2026年中に日本企業向けAI基盤「Crystal Intelligence」を提供予定で、日本語でのサポート体制が今後強化される見込みです。また、ソフトバンクとOpenAIは米国で最大5,000億ドル(約75兆円)規模のAIインフラ投資プロジェクト「Stargate」も進めています。

こんな組織に向いている

  • まずAIを全社的に試したい企業(知名度が高く社員の心理的ハードルが低い)
  • 市場調査やレポート作成が多い企画・マーケティング部門
  • 日本語サポート体制を重視する企業(ソフトバンク経由の法人サポートが今後拡充予定)

結局どれを選べばいい? ― 用途別おすすめ

3つのサービスを比較すると、それぞれに明確な強みがあることがわかります。

あなたの状況おすすめ理由
社内でGmail・Googleドライブを使っているGemini既存ツールとの連携がスムーズ。ただし本格エージェントは上位プラン
契約書チェック、営業リサーチなど専門業務を効率化したいClaude法務・営業・経理向けプラグインが最も充実
市場調査やレポート作成をよく頼まれるChatGPTDeep Researchが強力。出典つきで報告にも使いやすい
既存のGoogle Workspace契約にAIを追加したいGeminiGemini AI機能がWorkspaceプランに標準搭載済み
調査から資料作成までAIに一気通貫で任せたいChatGPTエージェント機能とDeep Researchの統合が最も進んでいる
日本語でのサポート体制を重視ChatGPTソフトバンク経由の法人サポートが今後充実予定

1つに絞らなくていい

実際のところ、「1社だけを選んで他は使わない」という必要はありません。業務の内容に応じて複数のサービスを使い分ける企業が増えています。

また、業界全体で「AIと業務ツールをつなぐ共通の仕組み」の整備が進んでいます。Anthropicが提唱した接続規格をOpenAIやGoogleも採用し、Linux Foundation(オープンソースの業界団体)のもとで標準化が進行中です。将来的には、サービスの乗り換えや併用がさらにしやすくなる方向です。

3強それぞれの”らしさ”

  • Claude: エージェントの 「深さ」 で勝負。専門業務を丸ごと任せる体験では一歩先を行く
  • Gemini: エコシステムの 「広さ」 で勝負。GoogleツールとAndroidの巨大なリーチが武器
  • ChatGPT: ブランドの 「強さ」 で勝負。圧倒的なユーザー基盤でプラットフォームの地位を固める

まとめ ― AIは「相談相手」から「仕事仲間」へ

2026年は、AIが「答える道具」から「一緒に働く仲間」に変わる年です。

営業のリサーチ、経理のチェック、法務の契約書レビュー。いままで「人がやるしかなかった」仕事の多くに、AIエージェントという選択肢が加わりました。

ただし、AIエージェントは「万能の魔法」ではありません。重要な判断の前にはAIが人間に確認を求める設計になっている製品がほとんどで、「完全に任せきり」ではなく、「AIの出した結果を人が確認して進める」というのが現実的な使い方です。

また、「エージェント」を名乗りながら実態は従来のワークフロー自動化と変わらない製品も存在します。導入を検討する際は、「ゴールを渡して自律的に動くか、それとも手順を自分で組む必要があるか」を見極めましょう。

まずは小規模なチームで1つ試してみて、自社の業務との相性を確かめる。それが、AIエージェント時代の第一歩です。

(2026年2月16日時点の情報に基づいています。各サービスの機能・料金は随時変更される可能性があります)


参考リンク

株価への影響・SaaS市場

Anthropic / Claude

Google / Gemini

OpenAI / ChatGPT

日本市場・パートナーシップ

業界標準化(MCP / Agentic AI Foundation)